技能試験の練習材料は本当に必要か
「練習材料はいらない」という意見には、それが正しくなる条件があります。まず買わなくてよいケースを先に整理し、そのうえで必要になる人はどこが違うのか、必要な量は何で決まるのかを並べます。結論を押しつけるページではありません。
まず、買わなくてよいケース
次のいずれかに当てはまるなら、練習材料一式を買わずに準備を終えられる可能性が十分にあります。実際にそうしている受験者はいます。
1. 職場で電線と器具が手に入る
電気工事会社や設備管理の部署に勤めていて、余った VVF ケーブルや取り外した器具を練習に使える環境があるなら、これが最も現実的な選択肢です。技能試験で使われる材料は、実務で日常的に扱うものと重なります。
ただし確認しておきたいことが2つあります。会社の資材を私用に使ってよいかは必ず先に許可を取ってください。無断で持ち出せば、資格の話以前の問題になります。もう1つは器具の種類が揃うかです。電線は端材でどうにでもなりますが、ランプレセプタクル・引掛シーリング・埋込連用器具・端子台といった、試験でよく問われる結線相手が現場に転がっているとは限りません。
2. 過去に受験していて器具が残っている
以前に受験した際の器具や工具が手元にあるなら、多くの場合買い足すのは電線だけで足ります。器具は結線をほどけば繰り返し使えるためです。ねじの山がつぶれていないか、ランプレセプタクルの台座が割れていないかだけ見ておけば、そのまま使えることが多いはずです。
3. 実務で毎日この作業をしている
器具の結線や電線の処理を業務として反復している人は、練習の目的が「作業を覚えること」ではなく「試験の形式に合わせること」に変わります。この場合、材料をまとめて買うより、複線図を書く練習と、試験特有のルール(電線の色別、器具ごとの結線の決まり、欠陥とされる仕上がり)の確認に時間を使うほうが効率的なことがあります。
4. 学校・職業訓練・講習で練習できる
工業高校、職業訓練校、会社が用意する講習などで実習の機会があるなら、そこで手を動かせます。自分が何回作れるのかを先に確認してから、足りない分だけ考えれば十分です。
それでも材料が必要になるのはどういう人か
入手経路がない
独学の人、異業種から受ける人、学生の人には、そもそも電線や器具を手に入れる経路がありません。ホームセンターで1点ずつ集めることはできますが、試験で使う器具は種類が多く、必要なものを漏れなく選び出すこと自体が手間になります。何が要るのか分からない段階で買い集めると、足りないものが後から出てきます。
手を動かした回数が結果に出る試験だから
技能試験は制限時間内に1つの課題を完成させる形式です。知識を問う試験と違い、「分かっている」ことと「時間内に手が動く」ことのあいだに差が出ます。ケーブルの外装をどこまで剥ぐか、輪づくりをどの向きで作るか、器具に差し込む前に何を確認するか——こうした動作は、読んで理解しても、実際にやってみると最初は時間がかかります。
裏を返せば、必要なのは「材料」そのものではなく反復の回数です。回数を確保する手段が他にあるなら、材料を買う必要はありません。手段がないなら、材料が回数を買う方法になります。
電線は一度切ると戻らない
ここが練習材料の性質を決めている点です。器具や工具は結線をほどけば何度でも使えますが、電線は切って剥いた時点で短くなり、元には戻りません。同じ課題をもう一度最初から通しでやろうとすれば、その分の電線を買い足すことになります。
この非対称性のせいで、「1回分」と「2回分」「3回分」で必要になるものが変わります。器具は最初の1式でよく、増やすのは電線だけ、という構造です。
必要な量は「どう練習するか」で決まる
技能試験では、あらかじめ公表された複数の候補問題の中から出題されます。公表される問題数や公表時期は年度によって変わり得るので、一般財団法人 電気技術者試験センターの公式発表で必ず確認してください。
量を左右するのは、次のどちらの方針を取るかです。
| 練習の方針 | 考え方 | 電線の要る量 |
|---|---|---|
| 全問を1回ずつ通す | 候補問題の全体像を把握し、当日どれが来ても初見にしない | 候補問題の数に比例する |
| 苦手なものを繰り返す | 時間がかかる課題・失敗しやすい課題に絞って反復する | 絞った課題の回数に比例する |
| 部分練習に割り切る | 輪づくり、器具への結線など、動作単位で切り出して練習する | 比較的少なくて済む |
多くの受験者は、この3つを組み合わせます。「まず全問を1回ずつ通して、時間が足りなかったものだけ2回目をやる」といった進め方です。この場合、必要な電線の量は1回分では足りず、全問2回分ほどは要らないという中間になります。自分がどれだけ繰り返す必要があるかは、1回やってみるまで分かりません。
判断の順番
- 入手経路を先に確認する。職場・学校・手元の在庫を数える。ここで足りるなら買う必要はありません。
- 候補問題を確認する。公表内容を見て、自分が知らない器具・結線がどれだけあるかを把握します。
- 複線図を書いてみる。材料がなくてもできて、しかも技能試験の失点は結線の誤りから出ることが多い部分です。ここが怪しいなら、材料より先にこちらです。
- 足りない分だけを埋める。器具は使い回せます。追加が要るのは電線です。
レンタルという選択肢もある
器具は繰り返し使えるという性質があるため、買わずに借りるという方法も選べます。合格後にその器具を使うかどうかで向き不向きが分かれるので、そちらは練習材料はレンタルと購入どちらが得かで条件別に整理しています。