電線の許容電流と太さ選定
負荷電流と、同一の管に収める電線の本数を入れると、その条件で使える最小の電線サイズがその場で出ます。本数による電流減少係数を掛けたあとの値で判定します。
この計算は何をしているのか
電線に電流を流すと、導体の抵抗によって熱が出ます。この熱で絶縁物が傷まない上限として決められているのが許容電流です。上限を超えて使うと、絶縁劣化から短絡・火災に至ります。電線の太さを決める第一の条件がこれです。
本ツールは次の順で判定しています。
- 電技解釈第146条の表から、各サイズの基準の許容電流を取る(周囲温度30℃以下)
- 同一管内の本数に応じた電流減少係数を掛ける
- 補正後の値が負荷電流以上になるいちばん細いサイズを採用する
なぜ本数が増えると電流を下げなければならないのか
許容電流の値は、電線が出した熱を周囲の空気に逃がせることを前提にしています。ところが同じ管の中に電線を何本も収めると、この前提が崩れます。
- 発熱源が増える — 1本あたりの発熱は同じでも、管の中の総発熱量は本数に比例して増えます。
- 逃がす面積は増えない — 熱を外へ逃がせるのは管の表面だけです。中に何本入れても放熱面積は変わりません。
- 内側の電線ほど不利 — 束の中心にある電線は周囲を他の電線に囲まれ、外側の電線より熱がこもります。
結果として、管内の温度が単独敷設のときより高くなります。そこで1本あたりに流してよい電流を下げることで、絶縁物の温度が上限を超えないようにします。これが電流減少係数です。
この係数の適用漏れは実務でも起こりやすく、「表の許容電流だけを見て細い電線を選んでしまう」のが典型例です。3本以下でもすでに0.70が掛かる、つまり管に入れた時点で表の7割しか流せないという点は押さえておいてください。
電流減少係数(電技解釈第146条)
| 同一管内の電線本数 | 電流減少係数 |
|---|---|
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5〜6本 | 0.56 |
| 7〜15本 | 0.49 |
| 16〜40本 | 0.43 |
| 41〜60本 | 0.39 |
| 61本以上 | 0.34 |
本数の数え方で迷いやすいのは接地線と中性線です。接地線は通電しないため通常は本数に数えませんが、扱いは適用する規程によって差があります。判断に迷う構成では原本で確認してください。
周囲温度について
上の表の元になっている許容電流は、いずれも周囲温度30℃以下を条件とした値です。天井裏、日射を受ける屋外盤の中、機械室のように周囲温度が高くなる場所では、電線から熱を逃がしにくくなるため、許容電流をさらに下げる必要があります。
この温度補正の係数は民間規程および電線メーカーの技術資料で示されているもので、本サイトでは転載していません。30℃を超える環境では、本ツールの結果をそのまま採用せず、必ず原本で補正を確認してください。
余裕率の見方
余裕率は、選んだ電線が負荷電流に対してどれだけ余力を持っているかの目安です。値がゼロに近いほど「ぎりぎり通っている」状態で、将来の負荷増設や、想定より周囲温度が高かった場合に耐えられません。増設の可能性がある幹線では、1段太いサイズも併せて検討しておくと安全側です。
過電流遮断器との関係
電線が許容電流を満たしていても、それだけでは回路は完成しません。電線を保護する過電流遮断器の定格との組み合わせも、電技解釈で別に定められています。ブレーカ容量が電線の許容電流を上回っていれば、電線が焼けても遮断されない事態が起こり得ます。本ツールは電線側の判定のみを行うものであり、遮断器の選定は含みません。