接地工事の種類と接地抵抗の判定
接地工事の種類と実測した接地抵抗値を入れると、その条件で許される上限値と、実測値が基準内かどうかがその場で出ます。漏電遮断器による緩和にも対応します。
そもそもなぜ接地するのか
接地(アース)は「感電しないためのもの」と説明されがちですが、実際にはもう少し広い役割を持っています。大きく3つです。
- 感電の防止 — 機器の絶縁が破れて金属製の外箱が充電されたとき、外箱が接地されていれば、人体よりはるかに抵抗の低い接地線側へ電流が逃げます。人が触れたときに人体にかかる電圧(対地電圧)を下げるのが狙いです。
- 地絡電流の帰路をつくる — 漏電遮断器や地絡継電器は「行きと帰りの電流の差」を見て動作します。接地がなければ地絡電流が流れる道がなく、電流の差が十分に出ないため保護装置が動作しません。接地は保護装置を働かせるための前提条件でもあります。
- 機器と電路の保護 — 高圧と低圧が混触したときに低圧側の電位が異常に上がるのを抑える、避雷器が受けた雷電流を大地へ逃がす、といった役割です。
2つめが特に重要です。接地抵抗が規定値より高いと、感電時の対地電圧が下がりきらないだけでなく、地絡電流が小さくなって保護装置が動かない、という二重の危険が生じます。接地抵抗値に上限が定められているのはこのためです。
接地工事は4種類ある
電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)第17条「接地工事の種類及び施設方法」で、接地工事はA種・B種・C種・D種の4種類に分けられ、それぞれ接地抵抗値の上限が定められています。
| 種類 | 接地抵抗値の上限 | 緩和 |
|---|---|---|
| A種 | 10 Ω以下 | — |
| B種 | 変圧器の高圧側又は特別高圧側電路の1線地絡電流のアンペア数で、150(条件により300・600)を除した値[Ω]以下 | |
| C種 | 10 Ω以下 | 0.5秒以内に自動遮断する装置を施設するとき 500 Ω以下 |
| D種 | 100 Ω以下 | 0.5秒以内に自動遮断する装置を施設するとき 500 Ω以下 |
出典:電気設備の技術基準の解釈 第17条
どの機器にどれを施すのか
「種類の選び方」は第17条ではなく、別の条文で決まります。機械器具の金属製の台および外箱については電技解釈第29条「機械器具の金属製外箱等の接地」が、使用電圧の区分ごとに施すべき接地工事を定めています。
| 機械器具の使用電圧の区分 | 接地工事 |
|---|---|
| 低圧 300 V以下 | D種接地工事 |
| 低圧 300 V超過 | C種接地工事 |
| 高圧又は特別高圧 | A種接地工事 |
出典:電気設備の技術基準の解釈 第29条(29-1表)
B種だけは性格が異なります。B種は機器の外箱に施すものではなく、高圧電路又は特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器に施すものです。これは電技解釈第24条「高圧又は特別高圧と低圧との混触による危険防止施設」で規定されており、施す箇所は低圧側の中性点(300 V以下で中性点に施し難いときは低圧側の1端子、低圧電路が非接地の場合は混触防止板)とされています。
つまり実務上の整理はこうなります。
- A種:高圧・特別高圧の機器の外箱、避雷器など。危険度が最も高いので上限も最も厳しい10 Ω。
- B種:柱上変圧器やキュービクル内変圧器の低圧側。高低圧混触時に低圧側の対地電圧が上がりすぎないようにするための接地で、他の3つとは目的が違う。
- C種:400 V級など、300 Vを超える低圧機器の外箱。
- D種:100 V・200 V級の一般的な低圧機器の外箱。エアコン室外機、金属管、分電盤など、現場で最も多く出会うのがこれ。
B種の抵抗値が固定値でない理由
A種・C種・D種は「10 Ω」「100 Ω」のように数値が直接書かれていますが、B種だけは計算で求めます。条文が定めているのは次の形です。
Ig は変圧器の高圧側又は特別高圧側の電路の1線地絡電流[A]です。分子が3通りあるのは、高低圧混触によって低圧電路の対地電圧が150 Vを超えた場合に、高圧側電路を自動的に遮断する装置の遮断時間によって変わるためです。
| 高圧側電路を自動遮断する装置の条件 | 分子 |
|---|---|
| 下記以外の場合 | 150 |
| 1秒を超え2秒以内に自動的に遮断する装置を設けるとき | 300 |
| 1秒以内に自動的に遮断する装置を設けるとき | 600 |
出典:電気設備の技術基準の解釈 第17条(17-1表)
考え方は単純で、すばやく遮断できるなら、電位が上がっている時間が短いので、接地抵抗は高くても許されるということです。逆に遮断が遅いなら、抵抗を下げて電位そのものを抑えるしかありません。
C種・D種が500 Ωまで緩和される意味
C種の10 Ω、D種の100 Ωは、現場によっては土質の関係で達成が難しいことがあります。そこで電技解釈第17条は、低圧電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは、いずれも500 Ω以下でよいとしています。
理屈は先ほどのB種と同じで、「電位が上がっている時間の短さ」で「電位の高さ」を補う考え方です。人体への危険は電圧の大きさだけでなく、それが加わっている時間にも左右されるためです。
注意したいのは、これは「漏電遮断器が付いていれば500 Ωでよい」という規定ではない点です。条文の要件は遮断装置の動作時間が0.5秒以内であることです。一般的な高速形の漏電遮断器は十分に速い一方、選択遮断のために動作を遅らせた時延形では条件を満たさないことがあります。緩和を適用するなら、その回路に実際に施設されている装置の動作時間を仕様書で確認してください。
測定値が上限ちょうどのとき
条文の書き方は「〇〇Ω以下」です。したがって上限値ちょうど(D種で100.0 Ωなど)は規定内です。本ツールもその通りに判定します。ただし接地抵抗は季節や土壌の乾湿で変動するため、実務では上限ぎりぎりを狙わず余裕をとるのが一般的です。
接地工事を施したものとみなされる場合
電技解釈第17条には、C種接地工事を施す金属体と大地との間の電気抵抗値が10 Ω以下である場合はC種接地工事を、D種の場合に100 Ω以下であるときはD種接地工事を、それぞれ施したものとみなす旨の規定があります。鉄骨造の建物などで問題になる規定ですが、適用にあたっては条文の要件を原本で確認してください。