力率改善コンデンサ容量の計算
有効電力[kW]と、いまの力率・目標の力率を入れると、必要な進相コンデンサ容量[kvar]が出ます。あわせて、改善で皮相電力[kVA]と電流[A]がどれだけ減るかも比較表示します。
この計算は何をしているのか
力率改善とは、負荷が必要とする遅れの無効電力を、進相コンデンサが出す進みの無効電力で打ち消して、電源から流れてくる無効電力を減らすことです。有効電力 P は変わらず、無効電力 Q だけを減らすので、結果として皮相電力 S と電流 I が下がります。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| Qc | 必要な進相コンデンサ容量 | kvar |
| P | 有効電力(改善の前後で変わらない) | kW |
| θ₁ | 改善前の力率角(cosθ₁ が改善前の力率) | — |
| θ₂ | 目標の力率角(cosθ₂ が目標力率) | — |
tanθ は力率から直接求められます。cosθ が力率なら sinθ = √(1 − cos²θ) なので、tanθ = √(1 − 力率²) ÷ 力率 です。式の中身は「改善前に必要だった無効電力 P·tanθ₁ から、改善後も残ってよい無効電力 P·tanθ₂ を引いた差」であり、その差ぶんをコンデンサに肩代わりさせている、というだけの話です。
力率を改善すると、何が得なのか
- 電流が減る — 同じ仕事(kW)をさせるのに流れる電流が減ります。力率0.8を0.95にすれば電流はおよそ0.8/0.95=約84%になり、16%ほど減ります。
- 電線・変圧器の負担が減る — 電線や変圧器の容量は電流(kVA)で決まります。電流が減れば、既設の幹線や変圧器のまま負荷を増やせる余地が生まれます。増設時にキュービクルを更新せずに済むなら、効果は電気料金よりはるかに大きくなります。
- 線路損失が減る — 電線での損失は I²R、つまり電流の2乗に比例します。電流が84%になれば損失は0.84²=約71%まで下がります。
- 電圧降下が減る — 電流が減るぶん、こう長の長い幹線での電圧降下も小さくなります。
- 電力会社の力率割引 — 高圧受電の契約では、力率に応じて基本料金が割り引かれる制度が一般に設けられています。
入れすぎると逆効果になる ── 進み力率と電圧上昇
ここが力率改善でいちばん見落とされる点です。進相コンデンサは多く入れれば入れるほど良い、というものではありません。
コンデンサの容量が負荷の遅れ無効電力を上回ると、系統から見た力率は遅れではなく進みになります。進み力率になると、次のような不都合が起きます。
- 受電点の電圧が上がる — 進み電流が線路のリアクタンスを通ると、電圧降下ではなく電圧上昇の向きに働きます(フェランチ現象)。過電圧は絶縁や機器の寿命に効いてくるうえ、上がりすぎれば保護が動作します。
- 軽負荷時にとくに起きやすい — 夜間・休日・長期休暇のように負荷がほとんど止まっているとき、コンデンサだけが入ったままだと進み側に大きく振れます。負荷に合わせてコンデンサを開閉する(負荷の運転と連動させる、あるいは自動力率調整装置を使う)のはこのためです。
- 電力会社の力率割引の対象外になりうる — 割引は一般に遅れ力率を前提としており、進み力率は改善として評価されない扱いが多く見られます。ここも契約先の約款で確認してください。
- 高調波の拡大 — コンデンサは高調波電流を引き込みやすく、系統のインダクタンスと共振すると過大な電流が流れます。直列リアクトルを組み合わせて対策するのが一般的です。
実務では、目標力率を1.00(力率100%)に置くのではなく、0.95〜0.99程度の遅れ側に少し余裕を残す設計をします。本ツールの初期値95%も、あくまで入力例です。目標値は設備の運転パターンと契約条件から決めてください。
コンデンサは負荷ごとか、受電点で一括か
設置場所によって効き方が変わります。受電点にまとめて置くと、電力会社から見た力率は改善されますが、構内の幹線に流れる無効電流は減りません。一方、電動機ごとの個別設置なら、その負荷から上流すべての電線で電流が減るため、損失・電圧降下の改善効果まで得られます。ただし台数が増えるぶん費用と保守の手間はかかります。
なお電動機に個別設置する場合、コンデンサ容量を大きくしすぎると、電源を切ったあとも回転を続ける電動機とコンデンサが自励現象を起こし、異常電圧を発生させることがあります。個別設置の容量は電動機の無負荷励磁容量を超えないようにするのが原則で、具体的な値は電動機メーカーの技術資料で確認してください。
使うときの前提
- 改善の前後で有効電力 P は変わらないものとして計算しています。コンデンサ自身の損失はごくわずかなので無視しています。
- 力率は遅れを前提としています。目標力率を改善前より低く設定した場合は計算できません(コンデンサでは力率を悪化させられないため)。
- 電流の比較値は、入力した電圧・相での計算値です。三相は線間電圧、平衡負荷を前提としています。
- 実際に選定するコンデンサは製品の定格容量(飛び飛びの値)から選ぶことになります。計算値ちょうどの製品はないので、計算値を超えない側に丸めるのが進み側に振らせないための基本です。