三相・単相の電力と電流の換算
電流[A]・有効電力[kW]・皮相電力[kVA]のうち、いま分かっている1つを入れると、残りがすべて出ます。三相と単相の切り替え、力率、電動機の効率にも対応しています。
この計算は何をしているのか
電力・電圧・電流・力率は、どれか1つが決まれば残りが芋づる式に決まる関係にあります。現場で必要になるのはたいてい「電動機の銘板に kW しか書いていないが、幹線に流れる電流が知りたい」「盤の電流計は読めるが、この負荷は何kVAなのか知りたい」という向きの換算です。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| P | 有効電力(実際に仕事をする分) | W |
| S | 皮相電力(電圧×電流でみた見かけの容量) | V·A |
| Q | 無効電力(仕事をせず往復するだけの分) | var |
| V | 電圧(三相は線間電圧) | V |
| I | 線電流 | A |
| cosθ | 力率 | — |
なぜ三相だけ √3 が付くのか
結論から言うと、電力そのものは「相ごと」に発生しているのに、私たちが測っているのは「線間」の電圧だからです。この2つの物差しの違いが √3 の正体です。
三相の負荷をY(スター)結線で考えます。3つの巻線が中性点で1点に集まり、そこから3本の線が外へ出ている形です。1つの巻線にかかっている電圧を相電圧 E、その巻線に流れる電流を I とすると、1相ぶんの電力は素直に E × I × cosθ、3相合計では 3 × E × I × cosθ になります。ここには √3 はまだ出てきません。
ところが現場で「200V」と呼んでいるのは、この相電圧 E ではなく、外へ出た2本の線の間の電圧、すなわち線間電圧 V です。三相の各相は互いに120度ずつずれた波形なので、2つの相電圧の差を取っても単純な2倍にはならず、ちょうど √3 倍になります。つまり V = √3 × E、言いかえれば E = V ÷ √3 です。
これを先ほどの式に代入すると、3 × (V ÷ √3) × I × cosθ となり、3 ÷ √3 = √3 なので P = √3 × V × I × cosθ が出てきます。√3 は「三相だから3倍」の意味ではなく、3倍したうえで、線間電圧という物差しに合わせて √3 で割り直した残りだと理解しておくと、式を忘れても復元できます。
なお、Δ(デルタ)結線では電圧の関係が逆で、線間電圧=相電圧、そのかわり線電流が相電流の √3 倍になります。どちらの結線でも、線間電圧と線電流で書いた式は同じ P = √3 × V × I × cosθ に落ち着きます。だから現場では結線を気にせずこの式を使えます。
皮相電力と無効電力の関係
皮相電力 S は、力率をいっさい考えず「電圧×電流」だけで見た値です。電線・変圧器・ブレーカーは電流の大きさで決まるので、機器の容量選定はkWではなくkVAで見るのが原則です。変圧器の銘板がkVA表記なのはこのためです。
P、Q、S の3つは直角三角形の関係にあります。S を斜辺、P を底辺、Q を高さと置くと S² = P² + Q² が成り立ち、底辺と斜辺の比が力率 cosθ にあたります。したがって Q = √(S² − P²) で無効電力が出ますし、Q = S × sinθ と書いても同じです。無効電力そのものは熱にも回転力にもなりませんが、電線には現実に電流として流れるので、太さや損失には効いてきます。
電動機の「入力」と「出力(軸出力)」を混同しない
ここが実務でいちばん取り違えの多いところです。三相誘導電動機の銘板に大きく書かれている「3.7kW」「11kW」といった値は、ほとんどの場合軸出力、つまりシャフトから機械側へ取り出せる機械的な出力です。電源から電動機が受け取る電気的な入力は、これより効率のぶんだけ大きくなります。
順序としては、電源側から見て 電流 → 皮相電力 S → 有効電力 P(=入力) → 軸出力 と、力率・効率の順に2段階で目減りしていきます。力率は「電圧と電流の位相のずれによる目減り」、効率は「電動機内部の銅損・鉄損・機械損による目減り」で、原因がまったく別物です。この2つを1回のかけ算にまとめてはいけません。
したがって、銘板の kW から幹線の電流を求めるときの正しい順序は次のようになります。
効率を忘れて軸出力をそのまま有効電力として扱うと、電流を数%〜十数%小さく見積もることになります。幹線サイズやブレーカー選定では危険側の誤りなので注意してください。
本ツールでは、入力欄の「有効電力[kW]」は電源から見た入力として扱い、結果の「軸出力」に P × 効率 の値を表示しています。銘板の kW(軸出力)から逆算したい場合は、有効電力の欄に「銘板kW ÷ 効率」の値を入れてください。効率を考えたくない場合は効率を100%にすれば、軸出力=入力として表示されます。
使うときの前提
- 三相負荷は平衡しているものとして計算しています。 各相の負荷が大きく偏っている盤では、実際の線電流は相ごとに異なります。
- 力率は遅れ(誘導性)を想定しています。 電動機・変圧器はすべて遅れです。進み力率の扱いは力率改善コンデンサの計算を参照してください。
- 電圧は負荷端の値です。 こう長が長い回路では電源電圧より下がっているので、厳密には電圧降下を考慮した電圧で計算します。
- 始動時の突入電流はこの式では出せません。全電圧始動なら定格の6〜7倍程度が一般的な目安とされますが、機種差が大きいのでメーカーの技術資料で確認してください。