電動機がある場合の幹線太さ(電技解釈第148条)

電動機を含む低圧幹線の電線太さは、電流をそのまま足しただけでは決まりません。始動電流を見込んだ割増しが規定されています。このツールは電気設備の技術基準の解釈 第148条第1項第二号にもとづき、幹線に必要な許容電流と、それを満たす最小の電線サイズを表示します。

幹線に必要な許容電流

適用した規定
計算式

これを満たす最小の電線サイズ

補正後の許容電流
ここから下は参考です 電圧降下は第148条とは別の条件です。必要なときだけ入力してください。
条件必要な最小サイズ内訳
許容電流(第148条)
電圧降下(参考)
両方を満たす採用サイズ
電圧降下に使う電流は「割増前」です 第148条の割増しは、始動時に一時的に流れる電流を電線の発熱側で見込むためのものです。常時の電圧降下は実際に流れる電流(定格電流の合計)で計算します。割増後の値で電圧降下を計算すると、必要以上に太い電線を選ぶことになります。

根拠となる条文

低圧幹線の電線の許容電流は、電気設備の技術基準の解釈 第148条(低圧幹線の施設)第1項第二号に定められています。要旨は次のとおりです。

条件幹線の電線に必要な許容電流
原則 その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計値以上
電動機等の定格電流の合計が
他の機械器具の定格電流の合計以下の場合
原則どおり(割増しなし)= 単純合計
電動機等の定格電流の合計が
他の機械器具の定格電流の合計より大きい場合(イ)
かつ 電動機等の合計が50A以下
他の機械器具の合計 + 電動機等の合計の1.25倍
同上(ロ)
かつ 電動機等の合計が50Aを超える
他の機械器具の合計 + 電動機等の合計の1.1倍

ここでいう「電動機等」とは、条文上電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具を指します。同条第三号により、需要率・力率等が明らかな場合は、これらによって適当に修正した値とすることができるとされています。本ツールは修正前の素の値で計算しています。

見落としやすい前提 割増しが効くのは電動機側の合計が、電動機以外の合計より大きいときだけです。事務所ビルのように照明・コンセント負荷が支配的な幹線では、途中にポンプが1台あっても割増しは発生しません。「電動機があれば必ず1.25倍」ではない点に注意してください。
50Aちょうどの扱いと、境界での逆転 条文は「50A以下」が1.25倍、「50Aを超える場合」が1.1倍です。50Aちょうどは1.25倍側になります。 また係数が切り替わるため、電動機の合計が50A(→62.5A)から50Aをわずかに超えた値(→約55A)へ動くと、必要な許容電流がいったん下がります。これは規定の構造上そうなるもので、計算の誤りではありません。境界付近の設計では、条文の要求を最低限として、余裕をどう見るかを設計者が判断してください。

なぜ電動機だけ割増しが必要なのか

電動機は、停止状態から回り始めるとき、回転子がまだ動いていないぶん逆起電力が立ちません。そのため始動の瞬間に定格電流の数倍の電流が流れ、回転数が上がるにつれて定格値まで落ちていきます。直入れ始動では定格の6〜7倍程度になることが一般的に知られています。

この電流は数秒で収まるので、そのピーク値で電線を選ぶ必要はありません。しかし始動のたびに繰り返し発熱を受けるのは事実であり、定格電流の合計だけで選ぶと電線の温度上昇の余裕がなくなります。第148条の1.25倍・1.1倍は、この余裕を条文の側であらかじめ確保するための係数です。

電動機の合計が大きくなるほど係数が下がる(50A超で1.1倍)のは、台数が増えるほど全台が同時に始動する確率が下がるためと理解すると筋が通ります。

幹線と分岐回路は別の話

本ツールが扱うのは幹線、つまり分電盤より電源側の、複数の回路をまとめて供給する電線です。分岐点から先の分岐回路第149条(低圧分岐回路等の施設)という別の条文で規定されており、こちらは過電流遮断器の定格ごとに電線の太さが定められています。幹線の計算結果を分岐回路にそのまま当てはめないでください。

区分根拠条文太さの決まり方
低圧幹線電技解釈 第148条負荷の定格電流の合計(電動機分は割増)
低圧分岐回路電技解釈 第149条その回路を保護する過電流遮断器の定格電流

過電流遮断器(ブレーカ)の選定はさらに別の号

「幹線の太さが決まった=ブレーカも決まった」ではありません。幹線を保護する過電流遮断器については、第148条第1項第五号に、原則としてその定格電流が幹線の許容電流以下であること、ただし電動機等が接続される場合は電動機等の定格電流の合計の3倍に他の機械器具の定格電流の合計を加えた値以下とすることができる、といった別の規定が置かれています。電動機の始動電流でブレーカが落ちないようにするための緩和です。

本ツールは電線側だけの判定であり、遮断器の定格は出していません。遮断器の選定は必ず条文の原本で確認してください。

計算の流れ

必要な許容電流 = ΣIH + k × ΣIM  k は 1(割増なし)/1.25/1.1
記号意味
ΣIM電動機等の定格電流の合計[A]
ΣIH電動機以外の電気使用機械器具の定格電流の合計[A]
kΣIM ≦ ΣIH なら 1、ΣIM > ΣIH かつ ΣIM ≦ 50A なら 1.25、50A超なら 1.1

求まった許容電流に対し、電技解釈第146条の許容電流値に電流減少係数を掛けた値が上回る、最小の電線サイズを選びます。減少係数の考え方は電線の許容電流と太さ選定で詳しく扱っています。

このツールが見ていないこと

関連ツール 電線の許容電流と太さ選定(電流減少係数を詳しく見る)/ 幹線サイズ選定(許容電流と電圧降下の両面から決める)/ 三相・単相の電力と電流の換算(出力・電流・力率の関係)
ご利用にあたって 本ツールの計算結果は参考値です。実際の設計・施工にあたっては、必ず電気工事士等の有資格者が、 電気設備の技術基準の解釈 をはじめとする根拠規程の原本で確認してください。本サイトは計算結果および利用によって生じた損害について責任を負いません。