技能試験で揃える工具の一覧
第二種電気工事士の技能試験で使う工具を、製品名ではなく用途で整理しました。「切る/むく/曲げる/締める/測る」という作業の流れに沿って並べてあります。何のためにその工具を持つのかが分かれば、手持ちの道具で足りるのか、買い足すべきなのかを自分で判断できます。
まず全体像:作業は5種類しかない
技能試験でやることは、突き詰めると次の5つです。工具はこの5つのどれかに対応しています。逆に言えば、この5つがすべて手当てできていれば工具の抜けはありません。
| 作業 | 対象 | 担当する工具 |
|---|---|---|
| 切る | ケーブル・電線を指定寸法に切断する | 電工ペンチ、ケーブルカッター |
| むく | 外装(シース)と絶縁被覆を剥ぎ取る | 電工ナイフ、VVFストリッパー、電工ペンチ |
| 曲げる・丸める | 器具に巻き付ける輪(の字)を作る | ペンチ、ラジオペンチ |
| 締める・圧着する | ねじ止め、リングスリーブの圧着 | ドライバー(+/−)、リングスリーブ用圧着工具 |
| 測る | ケーブル長・被覆の剥ぎ取り寸法を確認する | スケール(ものさし) |
用途別・工具の役割と、無いとどう困るか
1. 切る
| 工具 | 何に使うか | 無いとどう困るか |
|---|---|---|
| 電工ペンチ | ケーブルの切断。太い電線でなければこれ1本で切れる | 切断手段がなくなるため作業が成立しない。事実上の必需品 |
| ケーブルカッター | 太めのケーブルを潰さずに切る | ペンチで代用できる場面が多い。太物を扱わないなら優先度は低い |
切断はどの作業の入り口にもなります。ここでもたつくと後工程すべてが遅れるので、握りやすさと手の大きさの相性は確認しておく価値があります。
2. むく(被覆を剥ぎ取る)
| 工具 | 何に使うか | 無いとどう困るか |
|---|---|---|
| 電工ナイフ | ケーブル外装の縦割き、被覆の剥ぎ取り | 剥ぎ取り手段が限られる。刃物のため扱いに慣れが要る |
| VVFストリッパー | 外装と絶縁被覆をまとめて、決まった寸法で剥く | 剥ぎ取り作業に時間がかかり、芯線に傷を付けるリスクも上がる |
| 電工ペンチ(ストリップ穴付き) | 単線の絶縁被覆を剥く | 製品によって穴の有無が異なる。無ければナイフか専用工具に頼ることになる |
技能試験でもっとも回数が多いのが、この「むく」です。1本のケーブルにつき外装1回+芯線2〜3本ぶんの被覆を剥くので、課題全体では相当な回数になります。ここの速さと確実さが、そのまま全体の余裕につながります。
3. 曲げる・丸める
| 工具 | 何に使うか | 無いとどう困るか |
|---|---|---|
| ペンチ | ランプレセプタクル等に巻き付ける「の」の字の輪づくり | 輪づくりができないと、ねじ端子への結線が成立しない |
| ラジオペンチ | 細かい部分の曲げ、狭い場所での掴み | ペンチで代用できることが多い。あると細部が楽になる程度 |
輪づくりは、大きさ・向き・巻き方に決まりがあります。工具そのものより練習量が効く部分なので、道具を増やすより先に、手持ちのペンチで形を安定させるほうが近道です。
4. 締める・圧着する
| 工具 | 何に使うか | 無いとどう困るか |
|---|---|---|
| プラスドライバー | 器具端子・埋込連用取付枠のねじ締め | ねじ端子の器具が扱えない。必需品 |
| マイナスドライバー | ねじ締めのほか、埋込器具から電線を外す操作にも使う | 結線をやり直したいときに外せず、詰む場面がある |
| リングスリーブ用圧着工具 | 電線の接続部にリングスリーブを圧着し、刻印を付ける | 圧着接続が作れない。これも事実上の必需品 |
圧着工具は、リングスリーブ用(一般に柄が黄色のもの)と、絶縁被覆付き端子用とで別物です。見た目が似ていても用途が違うので、手持ちがある人は「リングスリーブに対応し、刻印が付くものか」を確認してください。刻印とスリーブサイズの選び方は 複線図の書き方と考え方 でも少し触れています。
5. 測る
| 工具 | 何に使うか | 無いとどう困るか |
|---|---|---|
| スケール(ものさし・コンベックス) | ケーブルの切り出し寸法、剥ぎ取り寸法の確認 | 寸法が目分量になる。長さの不足は作り直しにつながる |
寸法は「指定より短すぎる」と問題になりやすい一方、多少長いぶんには許容される考え方が一般的です。迷ったら短く切らないという判断ができるだけでも、やり直しは減ります。実際の判断基準は公表されている欠陥の基準で確認してください。
セットで買うか、単品で揃えるか
ここが多くの人の迷いどころです。結論から言えば、手持ちの工具がどれだけあるかで答えが変わります。一律にどちらが良いということはありません。
| セットで買う | 単品で揃える | |
|---|---|---|
| 向いている人 | 電気工事の工具をほとんど持っていない | ペンチ・ドライバーなど一部を既に持っている |
| 利点 | 抜け漏れが起きにくい。選ぶ手間がない | 重複買いがない。1つずつ好みで選べる |
| 弱点 | 持っている工具と重複することがある | 必要なものを自分で列挙する必要がある |
| 判断の目安 | 上の5用途のうち3つ以上が手当てできていない | 手当てできていないのが1〜2用途だけ |
単品で揃える場合は、上の表の5用途を順にたどって「これは持っている/持っていない」を確認するのが確実です。DIY用のドライバーやペンチをすでに持っている人は、実際に足りないのが圧着工具とストリッパーだけ、というケースも珍しくありません。
あると明確に速くなる工具の考え方
VVFストリッパーのような専用工具は、無くても作業は成立します。ペンチとナイフだけで課題を完成させる人もいます。ですから「必須」と言い切るのは正確ではありません。
それでも多くの人が使うのは、技能試験に時間の制約があるからです。前述のとおり、被覆を剥く作業は課題全体を通じて何度も繰り返されます。1回あたりの短縮が小さくても、回数が多いぶん積み上がります。加えて、専用工具は剥ぎ取り寸法が安定するため、芯線を傷つける・剥きすぎるといった手戻りが減るという効果もあります。速さそのものより、こちらのほうが効いてくる場面が多いかもしれません。
判断の軸は「速いか遅いか」ではなく、次の2点だと考えると整理しやすくなります。
- 練習でどこに時間を取られているか — 剥ぎ取りで手が止まるなら投資の価値がある。輪づくりや複線図で止まっているなら、工具を買っても解決しない
- 試験後も使うか — 実務に進む予定があるなら、試験のためだけの出費にはならない
なお、電動工具の使用可否など持ち込みの細かい規定は年度で変わりうるため、購入の前に受験年度の公式発表を確認してください。
工具が揃ったあとにやること
工具は手段であって、それ自体が目的ではありません。揃えたら次は、練習材料をどうするか(買う/レンタルする/最小限にする)と、複線図を自力で書けるようにすることの2つが課題になります。
- 複線図の書き方と考え方 — 手順の暗記ではなく、原理から書けるようにするための整理
- 技能試験の練習材料は本当に必要か — 材料をどこまで用意すべきかの判断
また、筆記(学科)で問われる計算については、当サイトの計算ツールが考え方の確認に使えます。電圧降下の計算や許容電流と電線の太さは、式の意味から解説しています。