電気工事士試験の計算問題の解き方

学科試験の計算問題は、種類がそれほど多くありません。公式を数十個覚えるより、「これは何を聞かれている型か」を見分けるほうが速く、忘れにくい。ここでは出題される計算を6つの型に分け、それぞれ何から手をつけるかを整理します。

このページの前提 出題範囲・出題数・合格基準は年度によって変わることがあります。本ページは計算問題そのものの解き方を整理したもので、試験の実施要領ではありません。制度や範囲については必ず 電気技術者試験センター の公表資料で確認してください。

まず決めること:全部解くのか、捨てるのか

学科試験は選択式で、計算問題も配点は他の問題と同じです。つまり1問あたりの重みは、暗記で取れる問題と変わりません。ここが判断の出発点になります。

とはいえ「計算はすべて捨てる」という戦略は勧めません。理由は2つあります。

現実的なのは「型1〜4は確実に取り、型5〜6は解ければ拾う」という配分です。そのうえで、本番では計算問題を後回しにして、暗記問題を先に片付けてから戻るほうが時間切れになりにくくなります。

計算問題の6つの型

型聞かれること優先度
1オームの法則(V・I・Rのうち2つから残り1つ)必ず取る
2合成抵抗(直列・並列)必ず取る
3電力・電力量・発熱量必ず取る
4三相・単相の電力と電流取りたい
5電圧降下解ければ拾う
6許容電流・幹線・分岐回路(数値を引く型)解ければ拾う

型1:オームの法則

V = I × R / I = V ÷ R / R = V ÷ I

覚えるのは1本だけで、あとは移項です。3つとも別々に暗記しようとするから混乱します。

つまずきどころ:問題文が「電圧」ではなく「電位差」「端子電圧」と書いてくることがあります。どれも同じVです。また、抵抗がkΩ、電流がmAで与えられる問題では、単位をそろえてから代入してください。kΩとmAをそのまま掛けるとVになる(10³×10⁻³=1)ので、この組み合わせに限っては換算なしで計算できます。単位の扱いに不安があれば電気の単位換算まとめで確認してください。

型2:合成抵抗

直列:R = R₁ + R₂ / 並列:1/R = 1/R₁ + 1/R₂

並列は逆数の和なので、そのまま足して終わりにしないこと。2本だけの並列なら「和分の積」(R₁R₂÷(R₁+R₂))が速いです。

検算の型:並列合成抵抗は、必ず一番小さい抵抗より小さくなります。これを知っていると、計算結果が正しい範囲にあるかを一瞬で確認できます。10Ωと15Ωの並列が12Ωになったら、その時点で間違いです(正解は6Ω)。

同じ値の抵抗がn本並列なら、合成は「1本の値 ÷ n」です。10Ωが3本なら約3.33Ω。回路図に同じ数値が並んでいたら、まずこれを疑ってください。

型3:電力・電力量・発熱量

P = V × I = I² × R = V² ÷ R
電力量 W = P × 時間 / 発熱量 Q = P × 時間

電力の式が3通りあるのは、オームの法則を代入して書き換えただけです。問題で与えられている2つの量に合う形を選ぶのがコツで、暗記量としては1つ分と考えて構いません。

つまずきどころ:電力量の単位です。Pがワット[W]で時間が秒[s]ならジュール[J]、Pがキロワット[kW]で時間が時間[h]ならキロワット時[kWh]になります。問題文が「何分間」で与えてきたら、秒か時間のどちらに直すかを、答えの選択肢の単位から逆算してください。

電熱線の問題での定番:同じ電圧をかけたとき、抵抗が大きいほうが発熱は小さくなります(P = V²÷R なので反比例)。一方、同じ電流を流したときは、抵抗が大きいほうが発熱は大きくなります(P = I²R)。この2つが逆であることを押さえておくと、直列・並列に接続した電熱線のどちらが熱くなるかという問題を落としません。

型4:三相・単相の電力と電流

単相:P = V × I × cosθ / 三相:P = √3 × V × I × cosθ

三相にだけ√3が付きます。√3 ≒ 1.73 として計算してください。

つまずきどころ:三相の電圧が「線間電圧」なのか「相電圧」なのかです。試験で単に「三相200V」とあれば線間電圧を指します。この2つを取り違えると、答えが√3倍ずれます。実際に数値を入れて確かめるなら三相・単相の電力と電流の換算が使えます。

Y結線・Δ結線の相電圧・相電流の関係を問う問題も出ます。「Y結線は電圧に√3、Δ結線は電流に√3」と覚えるのが一般的ですが、丸暗記が苦手なら「線間電圧と相電圧が同じになるのはΔ、線電流と相電流が同じになるのはY」と、等しくなるほうを覚えるほうが取り違えにくいです。

型5:電圧降下

配線方式ごとに係数が変わる簡易式を使います。式そのものと係数の意味は電圧降下の計算で解説しているので、ここでは試験特有の注意点だけ挙げます。

型6:許容電流・幹線・分岐回路

これは計算というより「規定に沿って数値を引き、条件を判定する」型です。純粋な四則演算より、どの条件に当てはまるかの判断が問われます。

問われる内容関係する規定確認できるページ
電線の許容電流と、同一管内本数による電流減少係数電気設備の技術基準の解釈 第146条許容電流と電線の太さ
電動機を含む幹線の必要許容電流同 第148条電動機がある場合の幹線太さ
分岐回路の遮断器とコンセント・電線の組み合わせ同 第149条分岐回路の選定

この型は、覚える数値が最も多い代わりに実務でそのまま使う知識でもあります。試験のためだけの暗記にならないぶん、投資に見合いやすい部分です。

本番で使える3つの検算

選択式なので、答えを出すことと同じくらい「その答えが明らかにおかしくないか」を見るのが効きます。計算ミスは必ず起きる前提で、次の3つを癖にしてください。

  1. 桁を見る。一般的な屋内配線で電流が数千Aになることはありません。選択肢に極端な値が混ざっていたら、それは計算ミスを誘う選択肢です。
  2. 大小関係を見る。並列合成抵抗は最小の抵抗より小さい。負荷端の電圧は電源電圧より低い。力率が1未満なら皮相電力は有効電力より大きい。こうした向きは、値を出さなくても分かります。
  3. 単位をそろえたか確認する。mm²・m・A・V・分・秒。計算ミスの多くは公式の誤りではなく単位の不一致です。

電卓が使えない前提で練習する

学科試験では電卓の使用が認められていません(持ち込み可能なものは年度ごとに公表されるため、必ず 電気技術者試験センター の受験案内で確認してください)。そのため、練習の段階から手計算に慣れておく必要があります。

手計算で効くのは、次のような概数の扱いです。

当サイトの計算ツールは答え合わせと、自分の計算のどこがずれたかを特定する用途に向いています。問題を解く前にツールで答えを出してしまうと練習になりませんが、解いたあとに数値を入れて突き合わせれば、どの段階で間違えたかが分かります。

技能試験の準備との関係

学科の計算と技能試験は、必要な準備がまったく違います。計算は紙とペンだけで進められますが、技能は材料と工具が要り、しかも調達に時間がかかります。学科の合否が見えてから技能の準備を始めると間に合わないことがあるので、並行して考えておくのが安全です。

関連ページ
ご利用にあたって 本ページは計算問題の一般的な考え方を整理したもので、試験の実施要領や出題範囲そのものではありません。 出題形式、持ち込み可能な物品、合格基準などは年度により変わることがあります。受験にあたっては必ず 電気技術者試験センター が公表する最新の公式発表をご確認ください。また、実際の電気工事は 電気設備の技術基準の解釈 等の根拠規程に従い、有資格者が行ってください。本サイトは本ページの利用によって生じた結果について責任を負いません。